ABOUT US
当講座ではウイルスや細菌といった感染病原体を原因とする「悪性腫瘍」や「炎症性疾患」の発症・進展機構の解明に取り組んでいます。
微生物関連疾患の特殊性を活用し、最終的には「悪性腫瘍」や「炎症性疾患」に共通の発症機構を解明したいと考えています。
「細胞」を用いてin vitroで示した結果を「動物」や「ヒト」でも確認・検証し、よりインパクトの強い研究を目指しています。
「研究を通じて,人類の幸福と福祉に貢献する」ために、悪性腫瘍の発症予防・治療薬や抗ウイルス薬の開発に取り組んでいます。
それら候補薬の中には、低分子化合物に加えて、沖縄県産の天然資源も含まれており、産学官共同事業としての展開を目指し、特許取得も行っています。
PATENTS
RESEARCH INTERESTS
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)
ヒトのCD4陽性T細胞に感染するレトロウイルスである。全世界で2,000万〜3,000万人の感染者がいると推定されており、カリブ海沿岸、南アメリカ、中南部アフリカ、パプアニューギニア、西南日本が高浸淫地域である。1990年の全国調査では、HTLV-1感染者のうち九州・沖縄地区在住者は50.9%であったが、2006年〜2007年の調査では、その比率は45.7%と減少し、関東地区が10.8%から17.7%と増加を示している。現在でも全国の推定感染者は108万人であり、1990年と比べ、大きな減少は見られていない。ATLにより毎年1000人を超える方が全国で亡くなられており、沖縄県でも毎年80人の死亡が確認されている。
HTLV-1はATLの他、HTLV-1関連脊髄症、ぶどう膜炎を引き起こし、関節炎、肺胞炎、シェーグレン症候群、多発筋炎、リンパ節炎との関連も報告されている。ATLの生涯発症率は5%とされており、関連疾患の中で最も頻度が高い。また、ATLは最も難治なT細胞性腫瘍であり、平均生存期間13ヶ月、3年生存率24%と満足のいく成績は得られておらず、造血幹細胞移植の導入、新規薬剤の開発などが進められているが、ブレークスルーとなる治療法はみつかっていない。
我々は、HTLV-1によるATL発症や進展の分子機構の解明とATL細胞生物学に基づく治療法ならびに発症予防法の確立を目指して、研究をおこなっている。特に、HTLV-1によるT細胞の不死化に必須のトランスフォーミングタンパク質Taxの機能解析を細胞内シグナル伝達系活性化と細胞遺伝子の転写制御を中心におこなっている。さらに、HTLV-1関連肺胞炎の発症機構の研究や新規の関連疾患の探索もおこなっている。
2014
特許第5610131号
抗ウイルス剤
2010
特許第4649617号
医薬およびこれに使用する抽出物
2009
特許第4337986号
ウイルス関連悪性腫瘍治療剤
カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)
KSHVはHTLV-1やEBVと同様に、リンパ球などに感染し、潜伏感染状態に移行する。その後、ヒトにカポジ肉腫や原発性体腔液性リンパ腫(PEL)を引き起こす。PELは悪性リンパ腫の一種であるが、がん細胞(PEL細胞)が腫瘍を形成せずに、腹水や胸水などの体液中で増殖するという特徴をもつ。KSHVには、宿主から取り込んだと考えられる遺伝子が多数存在しており、それらを巧みに利用することで宿主の細胞を修飾し、免疫回避や細胞増殖を制御している。PELの治療は通常、抗がん剤による化学療法が一般的だが、耐性ができて再発することが多く、その経過は不良である。我々は、ウイルスと細胞の双方に作用するデュアル効果を狙った新規治療薬の開発をおこなっている。
エプスタイン・バーウイルス(EBV)
EBVはほとんどのヒトが小児期に感染し、感染しても無症状のことが多く、また、一部の人で伝染性単核球症(発熱・リンパ節の腫れ・肝臓や脾臓の腫れなどを示します)を発症することもあるが、大多数は自然に治る。しかし、ごく稀に発熱やリンパ節腫脹といった伝染性単核球症の症状が長期間、繰り返し起こり、最終的に心不全や肝不全など多臓器不全や血球貪食症候群、悪性リンパ腫を引き起こす予後の悪い病態に陥ることがある。EBVは通常、B細胞に潜伏感染するが、慢性活動性EBV感染症(CAEBV)と呼ばれるこの疾患においては、T細胞、NK細胞に感染している。CAEBVの発症機序は不明な点が多く、我々はCAEBV由来のEBV感染T細胞株やNK細胞株を用いて、その謎に挑んでいる。また、EBV感染細胞の不死化に必須のLMP-1タンパク質の機能解析もおこなっている。